新型コロナとクルーズ船。岩田教授の件を1医療人の私個人が考えてみた。




背景

新型コロナウイルスの集団感染がおきているダイアモンド・プリンセス号。

そこに感染症の専門家である神戸大学の岩田教授がDMATの一員として乗船し、船の状況を批判ともとれる状況を動画にした。

批判の意図はなかったと謝罪し、動画は削除されているが、この件が呼んだ波紋も少なくはない。波紋のひとつに野党の政権批判の道具となったというのもあるがこのことは置いておいて、この件を医療人の一人の私からみて考察してみた。

岩田教授の主張について

感染症の専門家からみて十分な対策や防護策が実現されていなかったことは事実だろうと思う。

日常から感染リスクにさらされている医療職ですら徹底できていないと感じるものを一般人が多くいる中で徹底などほぼ不可能と感じる。

検査技師でも徹底できてないと感じる感染防御:手指消毒

WHOにより、このような手指消毒の推奨がある。

手指消毒 = 携行用アルコールで手を洗うこと

実際に現場でこれを行うことは感染から自身や患者を守るためにとても重要であることは言うまでもないと感じる。

これを守るような検査。それは患者に直接触れる生理検査である。

心電図を例にあげよう。これは実際に病院の感染対策チームからこうしなさいと言われた内容である。心電図の検査手順に沿って記そう。

  1. 患者を検査室に呼び入れる ← その前に手指消毒
  2. ベッドに横になってもらって衣服をぬいで肌を出してもらう ← その後手指消毒
  3. 機械に情報を入力 ← その後手指消毒
  4. 患者に心電図センサーを装着 ← その後手指消毒
  5. 心電図を記録 ← その後手指消毒
  6. 患者からセンサーをはずす ← その後手指消毒
  7. 患者を次へ案内し結果を整理 ← この時にも手指消毒

ひとりの患者の検査を行うのに7回は手指消毒を行えというのである。

忙しい病院ではひとりの技師が1時間に10人単位で心電図検査をします。

10人とれば1時間に70回のアルコール消毒。

普通に考えてみてください。手はぼろぼろになりますよね。

(過度なアルコール消毒は脱脂も行っている関係から、手荒れやむしろ細菌増殖につながるとも言われています。)

さらに忙しい中で手指消毒をそれだけ行うことは業務効率を落とし、待ち時間の増加にもつながります。

でもこれをしなさいと専門家である感染対策チームは現場に言うのです。

実際の現場では、普段から1と7を行っていました。

検査学会などでも7回の消毒を推奨する演題をみましたので、きっとこれが最善なのだろうと思いますが、手指消毒をしすぎることによる検査者の皮膚バリア破壊については議論されていなかったことを覚えています。

推測ですが、これと同じことがダイアモンド・プリンセス号でも起こったのではないでしょうか?

専門家は現場での徹底の難しさを知らない場合がある

医療職である検査技師でも、上記のように病院内の感染対策専門家チームに勧告されても徹底するのに疑問があがります。現場でそんなの無理でしょう?と。

現場、わかってます?と。そうするのが大事なのはわかるけど、できると思います?と不満が募ります。

クルーズ船という環境。そもそも病院ほどの設備を備えていないだけでなく、医療に関する知識が十分でない一般の方々が多くいる環境です。

そこに専門家が例えば上記のような、理論的に正しくても徹底が難しいことを指摘するだけどんどん指摘してきたらどうでしょう?

現場は騒然としますよね。せっかく少しづつできることからはじめていたところにそれをされると混乱するのは今まで頑張ってきた現場の人々です。

どうか、この一連の事件で現場の医療人や人々を責めないで欲しい

冒頭で記した通り、きっと岩田教授の言う通りしっかりとした対策が実行されていなかったのだろう。

だけどそれをすべきことはおそらく現場の医療人はわかっていたと思う。

私の挙げた一例の7回の手指消毒も、そうすれば感染が防げるのはわかる。だけどそれによるデメリット、現場の負担などを天秤にかけるとどこを最も優先すべきで、最善に近づけるにはどうするか、それは1日乗船したくらいではわからないであろう。

現場の医療人はきっと、今、懸命に少しでも多くの人を救おうと頑張っている。

私達はそれを応援するべきではないだろうか。

この件でとても残念に思うこと

実際に野党の議員がこの件で与党を責めていた。

今は現場やそれを指揮する誰かを責めるべきときではない。

少しでも事態が落ち着くように糾弾ではなく、議論をして欲しい。

岩田教授にも有益な情報をくれるサポーターになっていただきたかったというのが1人の医療人として私が思うことである。


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この記事を書いた人=ハットラボ(ハットリ)

臨床検査技師、超音波検査士(消化器)、血管診療技師、認定認知症領域検査技師

ブログを3個運営しているブロガーでもある。

 

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